Japan VR Summit参加レポート【その②】

Date
2016.07.28
Category
技術
Written by
porksaute
Japan VR Summit参加レポート

Japan VR Summit参加レポートその①はこちら
Japan VR Summit参加レポートその③はこちら
Japan VR Summit参加レポートその④はこちら

4.Session2 「海外VRビジネス最前線」

Moderator
・荒木 英士 氏(グリー)
Panelists
・Maureen Fan 氏(Baobab Studios)
・James Chung 氏(Reload Studios)
・Li Shen 氏(Tencent(※))
・Jesse Joudrey氏(VRChat)
※世界最大のゲーム会社と言われている。UnrealEngineを開発しているEpicGames社や、League of Legends』を運営する米ライアットゲームズ社の親会社

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図. Session2 登壇者の方々

各社の自社紹介では、Maureen氏は、Baobab Studioは3DCGアニメーション製作を請け負う会社でアメリカの映像製作会社ピクサーとも協力していると説明していた。
またカンヌ映画祭でもVR関連の話が取上げられたことを紹介し、映画業界でも注目を浴びているとした。

動画. baobabの製作したアニメーション。登場人物視点で楽しむことができる。

Reload Studios のReload 氏は、Oculusやサムスン、Appleなど大手からの情報を入手できたことで、いち早くVR事業に参入できたと説明した。また、PSVRの存在や、ターゲットの割合からしてVRに興味を持つゲーマーに対してリーチをかけるべきだとしていた。
Wiiはゼルダを2時間プレイすると腕が疲れてしまうから、コアゲーマーに対して不評だったとし、VRは座ったままでも楽しめる・障害者でも楽しめる、そんなコンテンツ開発が重要だと続けた。
日本はIP事業が発展していて、教科書のような存在である。間違いなく短期間で成長するとも話していた。
「World War Toons」というゲームを中心にVR事業を展開していると説明した。

動画8. World War Toons

TencentのLi氏は、中国のVRマーケットについて、様々な企業のハードが出ていて、中には50㎡で体験できる大規模なものもあると話していた。
また、2020年までに1億個のモバイルヘッドセットが売られ、facebook、Apple、Googleなど最大手も多くの投資を行っており、全ての業界を取り込む可能性があると思っているとの予想を示した。

VRに対する大きな懸念として、ハードウェアの性能がいくら向上してもHMDは身に着けなければならないので、「HMDをつける為の大きな理由が必要、負担を乗り越える必要がある」とし、その結果がVRソーシャルであるとの自論を展開していた。
Tencentとしては、配信プラットフォーム、コンテンツ、ハードウェアのどの分野にフォーカスしようか研究しているところとのこと。

VRChat のJesse氏は、運営しているソーシャルVRのVRChatの紹介をしていた。
アバターで自己表現をし、同じところに集まって、声や手でコミュニケーションをする。
クオリティが大したことなくても、仮想空間で目が合うだけで魔法がかかったような気持ちになる、ユーザー自身が空間を作る「ユーザージェネレートコンテンツ」型のVRだと説明していた。

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図. VRChat 他のVRコンテンツに比べると確かにクオリティは粗そうに見えるが人気がある

質疑応答のコーナーでの一幕

なぜVRに手を出したのか?

  • (Maureen氏)GearVRを体感したときに、これが未来だと思ったから
  • (James氏)2014年にシリコンバレーが本気を出したから
  • (Li氏)テンセントはひとつゲームを作って諦めた。コンテンツを作っても収益性が見込めないと思ったから。どれか1つにフォーカスするより、PFを構築していくほうがよさそうだと思った。
  • (Jesse氏)2014年に情報が入った。VRが流行ると確定してからの参入では遅い。ギャンブルをしなきゃならない。

今年は消費者にとってVR元年だと言われているが、市場が成熟するまでにどれだけかかるか?

  • (Maureen氏)今はまだコンテンツ不足。盛り上がるのは1、2年後だと思っている。
  • (James氏)勝ち組になる為には、できるだけ早くVRに関与し、長くVRの仕事をできる会社である。但し、技術的にもクリエイティブの観点からしても非常に難しいので、参入障壁は高い。
  • (Li氏)2年で収益をあげるのは難しい。小規模な会社が収益をあげることは難しい。
  • (Jesse氏)VRを始めるなら今が良い。2年後は更に参入障壁が高くなる。

また、VRはゲームだけでなく、BtoBで利益をあげやすいことが紹介されていた。
恐怖症の克服や手術の練習といった医療の分野でも開発が進んでいるようだ。
更に、VRの装着時間(プレイ時間)は、10分~30分程度が限界らしい。よって、コンテンツを作るのであればエピソードベースや、ミニゲーム、ファームゲーム等、短い時間で遊べるものが良いとのこと。
最終的にハードが小さくなり、技術が進歩して長時間の使用が負担にならなくなったら、長時間向けのコンテンツを作る動きが望ましい。
そんな中、VRChatは平均プレイ時間が70分(幅5分~3時間)で、比較的長い結果が出ている。これは、トークショーやカラオケをやっている事が要因として挙げられるとしていた。

この事業で大切なことについて、ユーザーを魅了するためには、「デバイス以上のコンテンツ」にしなければならない、「実現できないようなことを実現できるもの」「ユーザーに訴えかけるようなもの」にしなければならないと話していた。
TencentのLi氏は、仮に市場が巨大にならなくても、ブームに備えて準備はしておいた方が良いとして締めくくっていた。

5.Session3 「VRで生まれるヒットゲーム」

Moderator
・久保田 瞬 氏(Mogura VR)
Panelists
・馬場 功淳 氏(コロプラ)
・原田 勝弘 氏(バンナム・鉄拳PL)
・水口 哲也 氏(レゾネア)

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まず、各社の自社紹介から始まった。
コロプラの馬場氏は、2年前からVR業界に参入し、これまでで「パズルゲーム」「射的ゲーム」「卓球ゲーム」「テニスゲーム」「白猫VRプロジェクト」の計5本のアプリをリリースしている。
社内でVRに携わっているのは、4、50人で、「仮想現実チーム」というVR専門のチームを設立して取り組んでいると話していた。
また、360°動画専門の「360Channel」という子会社設立や、「Colopl VR Fund」というVR専門のファンド(約60億円規模)を設立し、社内リソースの関係上足を踏み入れられない分野にも関与できるようにしている。
現在も社内外合わせて5タイトル程度開発中とのこと。経験談として、白猫VRプロジェクトを開発中「酔い」に苦戦、VRでアクションゲームを作るのは難しいと感じたと話していた。

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図. VR Tennis Online


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図. 白猫VRプロジェクト


バンナムの原田氏(鉄拳プロジェクトのPL)は、2011年からHMD型のVRの研究を開始し、鉄拳をVR化したり、自社IP(アイドルマスターなど)をVR化したり試行錯誤したとのこと。2013年にPSVR向けタイトル「サマーレッスン」に本格着手し、2014年には“史上最大のVR体験会”と称し、2日間で1000人規模で、サマーレッスンを体験して貰った。体験会で得たフィードバック・ユーザーからの意見は今でも僕の宝だと話していた。
また、お台場ダイバーシティで「VR Zone」というVRアトラクション体験施設を展開しており、高層ビルの高いところで怯えている猫を助ける「高所恐怖SHOW」やロボットゲームの「アーガイルシフト」など6作品が体験できるという。
>>「VR Zone」体験レポート記事」はこちら!

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図. VRZone人気No1アーガイルシフト

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図. ゲーマー期待度No1サマーレッスン

また、最大の挑戦として、集団的プレゼン力の弱さへの挑戦を挙げていた。
確かに、ハイスペックなデバイスやHMDを必要とするVRのプレゼンは難しそうだと筆者自身も感じた。

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図2012年に決済権限者にHMD型VRのデモを見せ、先行投資の話をした時の反応がこちら。
地蔵わろたwwww

レゾネアの水口氏は、元々セガの出身で、現在はアメリカにVR事業専門のエンハンス・ゲームスを設立し、VRゲームの開発を行っている。アメリカに会社を設立した理由として、情報が早く・契約がスピーディーであることを挙げていた。
2016年末に、2001年にPS2で出した「Rez」という音楽シューティングゲームのVR版をPSVRでリリースする予定だとしていた。

「共感覚的な体験」をテーマとして、慶応メディアデザインという心臓を研究しているチーム・Pafumeの演出を担当しているライゾマティクスのメンバーとで、「シナスタジアスーツ(全身バイブレーションスーツ)」を作り、ゲームと連動させている。
また、周りの人達との一体感も生み出したかった為、振動の伝わり方によってLEDが光る仕組みも取り入れたとのこと。

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図. (左)Rez (右)シナスタジアスーツ

VRでゲームを作る意味/魅力について

VRでゲームをやる面白さ、意味は?という質問に対し、以下の意見が挙がった。

馬場氏
「VRは今後どうなるのか?」という視点で、おそらく全ての人にとってパーソナルなものになっていると考えた。
つまり、「VRに適したゲーム」を考えるのではなく、VRが当たり前に存在しているからゲームもしたいと思うはず、だからゲームを作らなければならないと思っている。
今後どのようなゲームを作っていくかについては、画面転換が少ないゲームを作るつもりである。これは慣れてない人がプレイすると簡単に酔ってしまうことへの対策方針だという。

原田氏
ゲーム内のキャラクターがプレイヤー側と意識していないことがずっと違和感だった。
例として、何かゲームをしてトイレに立っても何も言われない。目をそらしてても「どこ見てるの?」って言われる、目を合わせてくるといったプレイヤーとキャラクターの関係性が生まれることが圧倒的に今までと違って面白いと感じる。

水口氏
1990年代からセガやナムコは研究をしていた。当時は解像度が低くて、研究をするにも気持ち悪くて大変だった。
しかし近年では技術やデバイスが進化して、やりたいと思えることが実現できるようになっており、フルスクラッチで出来ることが面白いと感じている。

VRゲームの作り方・考え方について

今までのゲーム開発と違う点は?という質問に対し、以下の意見が挙がった。

馬場氏
これってVRで作る必要はあるのか?と思う点は多々ある。例えばVRのテニスゲームを作っている時は、やってて楽しいと感じるが、別にこれ2Dディスプレイでよくね?って思ったとのこと。
無理矢理VR感を出すために、ボールが空中をくるくる回るようなスキルを開発した。また、ダブルスは後ろを振り返って味方の動きを見る点が良いと感じた。意外と、VRならではを考えるのが難しい。

また、VR空間ならではの操作方法を考えるのも難しい。
Oculus Touch向けにゲーム開発していると、殆どがボタン操作になってしまって、せっかくVRの空間にいるのにつまらなくなってしまう。それらを研究・確立していくことがVRらしさを生み出すことに繋がるとした。


原田氏
VRならではといってVR空間で何でもかっこいいことをやろうとすると、操作性が損なわれてしまう。
VRの開発では、今までの作り方が全く通用しない。今までは四角い画面で、見せたいところを都合よく見せれたが、VRでは自分がカメラなので、視線誘導が難しいしどこを見られるか分からないので、手が抜けないし難しい。
最終的にコストに繋がる。

VRゲーム開発のコストについて

コストについては、以下の意見が挙がった。

馬場氏
作り手が慣れていない、作らなきゃいけないものも多いので、コストは当然あがる。
また、360°動画の場合はデータ量が非常に大きくなる為、HDDで500万かかったこともある。

原田氏
臨場感を得るには情報量が必要。細部まで気を使わなきゃいけないので、コストがかかる。

水口氏
アンリアルなものを作ろうとすれば何でもアリなのでそこまでコストは増えない印象。増えないというのは新しい分野に挑戦する上で、想定の範囲内という意味。
但し、試行錯誤する時間はかなりかかっているので、そういう意味でのコストは確実にかかってくる。

また、欧米のコアゲーマーは最初にお金を払わないゲームを嫌がる。お金を払うからクオリティを担保して欲しいという欧米と、日本ではかなり差がある。何がユーザーにとって最もリーズナブルで満足ができるゲームなのかによって、掛けれるコストが変わってくる。

日本におけるVRの普及について

今後日本でどのようにVRが普及していくか?という質問に対し、以下の意見が挙がった。

原田氏
自社批判ではないが、VRZoneに足を運ぶのが面倒。
PSVRを選んだのは、ターゲットが見えていて開発が行い易いから。コアからミドルコアのユーザーをターゲットに、家で楽しめるものを作りたい。
鉄拳は家庭用になると90%以上が海外の売上で、企画書の段階でどう考えても日本では採算が合わないと感じていて、WorldWideでの回収を視野にいれなければやっていけない。

水口氏
原田氏と同感。
PS4は世界で4000万台売れていて、PSVRは入り口として入り易い。
欧米と日本で考え方が違いすぎて、欧米はハイクオリティなものを求める。今までPS1~4まで出てきているが、結局四角い画面からは変わっていない。
今回のジャンプは非常に大きく、それを十分に楽しんでもらえるようにしたい。一方で、日本では300万台弱しか売れていない。こういった背景もあり、日本ではなく欧米をターゲットにしている。

馬場氏
今のモバイル端末だと、100%のVR体験をするのは難しいため、ハイエンドデバイス向けに開発を行っている。
海外で動いているお金の量、人の量は物凄いが、それに比べて日本は非常におとなしい。
Google、Apple、Facebookがこれだけ動いていて、中国の動きまで見ていると、確実に普及すると思えるし、もう戻れないとすら思える。コロプラでは、今使っているお金は必ず将来返ってくるものだと信じて投資している。

その②まとめ

コメンテーターの3人ともが、日本国内でのVR市場はまだまだ弱く、当面は海外マーケットに照準を合わせているという点は、「なるほどな」と思いました。
国民性の違いから、VRの普及の仕方が大きな影響を受けているようですね。

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